「おまえはいったいだれかね」
「奥様からだんな様のお世話をするようにとおおせつかりました」
「夫はどうしたの」
「私の夫は軍の責任者としてお上のお米を輸送しておりましたが、船が沈みまして、家の財産を全部投げ売って償いましたがまだ足りず、私を売ったお金で弁償した次第でございます」
安石は顔を曇らせて訊いた。
「奥様はおまえを手に入れるためにいくら払ったのか」
「九十万銭でございます」
安石はその夫を呼んでもとのように夫婦にならせ、支払ったお金はそのまま取らせてやったという。
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