2019年1月10日木曜日

謹賀新年10


   「おまえはいったいだれかね」

   「奥様からだんな様のお世話をするようにとおおせつかりました」

   「夫はどうしたの」

「私の夫は軍の責任者としてお上のお米を輸送しておりましたが、船が沈みまして、家の財産を全部投げ売って償いましたがまだ足りず、私を売ったお金で弁償した次第でございます」

  安石は顔を曇らせて訊いた。

   「奥様はおまえを手に入れるためにいくら払ったのか」

   「九十万銭でございます」

安石はその夫を呼んでもとのように夫婦にならせ、支払ったお金はそのまま取らせてやったという。

0 件のコメント:

コメントを投稿

サントリー美術館「NEGORO」11

   右幅に狩場明神が描かれています。狩場明神は高野山の地主神です。弘法大師伝によると、弘仁7年(816)夏に 大師 が伽藍の地を求めていた折、大和国那智で出逢い高野の地へと導いたのが、猟人の姿をした狩場明神でした。 以上は 大阪市立美術館・石川温子さんの カタログ解説によるとこ...