2018年11月19日月曜日

東京国立博物館「斉白石」2


その後、中国や台湾、香港で斉白石の作品に触れる機会は何回かありましたが、これだけまとめて見るのは、もちろん初めての経験、改めて斉白石の豊饒な美的世界に深く心を動かされました。

 これまで一般に「斉白石」を「さいはくせき」と読んできましたし、『新潮世界美術辞典』でも「さいはくせき」で立項しています。もちろん僕も、「さいはくせき」で辞書登録していますが、この特別企画展では「せいはくせき」とルビをふっています。おかしいなぁと思って、『諸橋大漢和辞典』を引いてみました。

「斉」には「せい」と「さい」という二つの発音がありますが、ほとんどすべての熟語や固有名詞は「せい」です。「さい」は「斉戒」くらいしかなく、「斎戒」に同じとありますから、この読みを転用したのではないでしょうか。あるいは、日本の家名「斉藤」からの類推で、「さいはくせき」と読むようになったのかもしれません。ちなみに、現代中国語において「斉」は「qi」、「斎」は「zhai」で、まったく異なる発音です。

0 件のコメント:

コメントを投稿

渡辺浩『日本思想史と現在』7

しかし渡辺浩さんは、先行研究が指摘した二つの点について、高橋博巳さんの見解が示されていないことが、やや残念だとしています。その先行研究というのは、大森映子さんの『お家相続 大名家の苦闘』(角川選書)と島尾新さんの『水墨画入門』(岩波新書)です。 僕も読んだ『お家相続 大名家の苦闘...