2018年9月28日金曜日

静嘉堂文庫美術館「松浦武四郎展」3


 『自伝』の一節もすごいなぁと感動を呼び起こしますが、僕はその辞世に、さらに強く心を動かされました。それは歳をとるにしたがって、2月6日がめぐってくるたびに、だんだんと強まっていきました。その後、少なくない偉人の辞世を知りましたが、武四郎を超えるものに出会った記憶はありません。

ところが今回、これは武四郎が理想を述べた辞世であって、実際はそうじゃなかったことを知りました。武四郎は晩年、法隆寺や伊勢神宮外宮、出雲大社など、かつて訪れた全国の名だたる社寺から古材を譲り受けました。それを用いて「一畳敷き」の書斎を、神田五軒町の自邸に増築し、そこで悠々自適の日々を送りました。現在は、国際基督教大学内の有形文化財「泰山荘」に移築され、大切に保存管理がはかられています。

0 件のコメント:

コメントを投稿

根津美術館「唐絵」8

   その山水はいわゆる辺角の景という構図になっています。画面の左上から右下に対角線を一本引いて、その左下に近景を描き、右上の余白に遠景を添えて遠近感を視覚化させています。 このような辺角の景は、中国・南宋時代の画院画家である馬遠や夏珪が好んで用いた構図法でした。ですから馬の...