2018年6月30日土曜日

鏑木清方記念美術館「清方の美人画」4


名文家としても知られる清方さんには、『こしかたの記』というすばらしい自叙伝がありますが、アトリエ名を冠した『紫陽花舎随筆』も実に味わい深いエッセー集です。かつて『北斎と葛飾派』(日本の美術367)という拙著をまとめたとき、引越し魔・北斎を考える際の参考として、『紫陽花舎随筆』から「引越ばなし」の一節を引用したことを思い出します。

そのなかの「つゆあけ」にも、紫陽花へのオマージュが出てきますので、これも引用しておきましょう。

立葵の花は入梅一ぱい裾から梢へと順々に咲き上ってゆく、梅の実の熟れて落ちるのもこのころなり、紫陽花の蹴鞠に似た大きい花の枝もたわわに、水浅黄、うす紫、しとどにぬれて七色に染める花の色はあやしく美しい。


0 件のコメント:

コメントを投稿

追悼シンポジウム「高階秀爾館長と大原美術館」8

  尊敬して止まぬ文人画家・祇園南海が「五老峰図」を描いたとき、李白の「廬山の瀑布を望む」を心に浮かべていたことは指摘するまでもありません。しかし、五老峰から一望千里の風景を写生する虎次郎の頭上にも、李白が降臨したことでしょう。僕は李白の絶唱を中国語でつぶやくように暗唱しながら、...