2018年4月23日月曜日

横浜美術館「ヌード」8


しかもまずいことに、ヌードはリアリズムの絵画でした。現実の肌の色のままに塗られて体温を感じさせ、陰影が施され、人間そのもののプロポーションがまもられていました。絵空事の春画とちがって、現実の裸体にきわめて近かったのです。笑って済まされない絵画でした。さらにそれが博覧会や展覧会という公開の場所で、公衆の面前に展示されたことでした。

たしかに春画は、一般に流布していました。しかし見るときは、個人かごく限られた人数のグループで楽しむアンチームな絵画だったでしょう。少なくとも、床の間に掛けたり、大絵馬に仕立てたり、書画会で揮毫されたりはしませんでした。春画ではない普通の浮世絵は、床の間はともかく、柱絵として柱に掛けられましたし、大絵馬の主題や様式に選ばれました。浮世絵師は書画会にちゃんと参加しています。


0 件のコメント:

コメントを投稿

東京美術『日本視覚文化用語辞典』3

  前回、東京国立博物館の特別展「蔦屋重三郎 コンテンツビジネスの風雲児」を紹介しましたが、実をいうと後期高齢者の僕には「コンテンツ」の意味がよく飲み込めませんでした。しかしこの辞典にはチャンと「コンテンツ」という項目があって、簡にして要を得た説明がなされています。しかも「マーシ...