2018年4月27日金曜日

横浜美術館「ヌード」11


それでは春画に馴れ親しんでいた、つまり生活の一部とさえなっていた庶民にとってはどうだったでしょうか。春画は「笑い絵」としてちょっと変わったジャンルを形成していましたが、その他の絵画ジャンルとの垣根は、それほど高いものではありませんでした。もし「朝妝」や「西洋婦人像」が幕末や、明治初年に描かれたとすれば、庶民はこれを珍しい西洋女性の裸体として、笑いながら楽しんだかもしれません。

それを実証するのは、喜多川歌麿の名作春画「歌枕」です。春画の伝統にしたがって12図で1セットになっていますが、その最後が西洋の男女が愛し合うシーンとなっています。ことさらに陰影法――キアロスクーロが強調されている点に、美術史的な興味を掻きたてられますが、この問題は改めておしゃべりすることにしましょう。

これを見て笑っていた庶民、文字通り「笑い絵」としてエンジョイしていた江戸庶民が、「朝妝」や「西洋婦人像」を性的で卑猥などと思うはずがありません。


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