2018年1月28日日曜日

静嘉堂文庫美術館「歌川国貞展」7


これは美術史学者による様式的解釈ですが、グスタフ・ルネ・ホッケは著書『迷宮としての世界 マニエリスム美術』(岩波文庫 2011年)において、人間が広く有する非合理なものに対する意識下の誘惑を重視しています。これらを知るとき、歌川国貞の芸術がマニエリスム的な性格を秘めていることに、改めて驚くのは私一人ではないでしょう。

国貞芸術がきわめて個性的であることは否定できません。しかし個性的だけなら、国貞をマニエリスムと呼ぶことはできません。

先の若桑みどり先生が、著書『マニエリスム芸術論』(ちくま学芸文庫 1994年)のなかで、「既成の『カノン』を下じきにしていない芸術、自然発生的にひとつの個性から流れ出した芸術は、決してこれをマニエリスムとは呼ばない」と指摘しているように……。いずれにせよ、僕は国貞のすべてを個性と直結させる個性偏重史観から少し距離をおきたいのです。

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