2017年9月1日金曜日

赤須孝之『伊藤若冲製動植綵絵研究』4


 しかしこれだけでは、たとえ科学者でも、赤須さんの言わんとするところを十分理解することはちょっと難しそうですね。やはりこの本を自腹で求めて、あるいは持っている友だちから借りて、はじめからじっくり読むことをお勧めしたいと思います。ともかくも読み出したら止まらない、じつにスリリングな、そしてすぐれた若冲の心理学的イコノロジー研究です。

いや、ヴァールブルグやE.H.ゴンブリッジ、アーウィン・パノフスキーの唱えたイコノグラフィーやイコノロジーには、もともと心理学的研究の要素が入っていたわけですから、「心理学的イコノロジー」なんてトートロジーそのものですね。ただ「じつにスリリングな、そしてすぐれた若冲のイコノロジー研究」と言い換えることにしましょう。

つまりこの本がすごいのは、きわめて科学的な図像分析でありながら、最後にそれが哲学や宗教、思想という人文科学の問題と相似形に結ばれているという指摘――僕的に言えば、両者はフラクタルであるという指摘に昇華している点なんです!!

赤須さんのおっしゃる若冲と「草木国土悉皆成仏」の関係については、この「饒舌館長」でしたか、あるいは以前の「K11111のブログ」でしたか、末木文美士さんの『草木成仏の思想』によりつつ、私見をアップしたような気もしますが……。

「赤須」の「須」にカミカンムリを加えると、「赤鬚」となって、あの三船敏郎が名医を演じた黒澤明監督の名画「赤ひげ」を思い出させてくれますが、いつか直接お会いして、若冲のお話をお聞きしたいものと願わずにはいられません。

 

0 件のコメント:

コメントを投稿

すみだ北斎美術館「北斎をめぐる美人画の系譜」4

  確かに「華奢」ですが、とても健康的でスラリとし、その身丈<みたけ>が成長期の少女のように、さらに伸びて行きそうな感じが魅力的ですね。北斎の美人図に見られるこのような感覚を、かつて僕は「伸暢感覚」と呼んだことがあるんです。  寛政7年(1795)北斎は江戸琳派の創始者ともいうべ...