「交趾四方魚文香合」から、話は塩になり、お酒になり、酔迂叟先生の『酒の肴』になって、その跋文を紹介しました。のちに酔迂叟先生は、この『酒の肴』およびこれと双璧をなす名著『抱樽酒話』に、さらに明の夏樹芳の『酒顛』と陳継儒の『酒顛補』を訳出して加え、『酒中趣』を著わしました。
ちなみに「酒顛」とは、酒キチガイのこと、丹波国大江山とか近江国伊吹山に住んでいたという「酒呑童子」は「酒顛童子」と書かれる場合もありますね。『酒中趣』の原版は1962年筑摩書房から発刊されたようですが、僕が持っているのは、1984年出た筑摩叢書版です。その序文これまた実に素晴らしいのですが、ちょっと長いので、最後の一節のみを掲げることにしましょう。
酒は もとより吾が性の愛するところ、酒を飲み、酒の書を著わすことは、楽しみ中の楽しみである。酔叟 近頃の日課は、晩酌して早く床に入り、ラヂオを聴きつつ眠る。二時か三時頃に目が覚める。静かに書斎に座して物を書く。ほっこりすると、煙草代りに瓢箪の酒を二杯か三杯のむ。飲み過ぎて眠くなると、復た床に入ることも有る。
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