2017年4月28日金曜日

静嘉堂文庫美術館「挿絵本の楽しみ」4


もっとも、「僕の一点」に選んだのは、かつて山根有三先生編『琳派絵画全集 抱一派』のために「抱一の伝記」という拙文を書いた時、これを取り上げたことがあったからです。酒井抱一が、尻焼猿人という愉快な狂歌名とともに登場するのですが、もちろん巻頭、姫路の大名酒井家の御曹司は、御簾の向こうに鎮座ましましていらっしゃいます。猿人の一首は……

御簾ほどになかば霞のかゝる時 さくらや花の王と見ゆらん

兼好法師以来伝えられてきた、完全や明晰を厭い不完全や曖昧を好むという日本的美意識が、江戸的諧謔のなかに解き放たれた一首として、興味尽きないものがあります。

もっとも、展示されているのは、酒上不埒と門限面倒の見開きとなった2ページです。不埒は黄表紙作家として名高い恋川春町、面倒は通称高橋徳八、浜町に住んでいた四方連の狂歌師であったことを、狩野快庵の名著『狂歌人名辞書』が教えてくれます。

0 件のコメント:

コメントを投稿

注: コメントを投稿できるのは、このブログのメンバーだけです。

静嘉堂「曜変天目」2

黒釉の表面に多くの円い斑文が浮かび、その周囲がきらめいて星紋となり、華麗な虹彩を放つ曜変天目は、この静嘉堂文庫美術館所蔵を含めて 3 碗のみ、古くから稀観の神品としてたたえられ、日本だけに伝えられてきました。とくに僕が魅了されるのは、もちろん虹のごとき光彩です。古い文献に...