新版画は明治42年1909京橋に渡邊版画店を開業した渡邊庄三郎による、文字どおり新しい時代の新しい版画です。新版画の第1号ともいうべき、オーストリア人画家フィリッツ・カペラリの「鏡の前の女」が世に送り出されたのは、大正4年1915のことでした。ところで6年ほど前、『國華』でも新版画特輯号を企画、1501号として発行しました。その巻頭言「『新版画』特輯に当って」を執筆したのは、編輯委員の佐藤道信さんでした。
佐藤さんは「渡邊がめざしたのは、浮世絵と同じ彫り・摺りの技法を用いながら、『旧型に囚われ』ず、『画家の個性を発露』し、『独立した芸術品』としての木版画をつくることだった」と述べています。これが新版画の定義だといってよいでしょう。
しかしこの特別展では、新版画に先立つ小林清親きよちかや井上安治やすじの仕事、とくに光線画とよばれる作品の重要性に着目して、これを新版画前史に位置づけています。その結果、江戸時代の浮世絵風景版画から、清親・安治を通して新版画へという展開のプロセスがとてもよく理解されるようになったと思います。

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