ところがその日に、前の夫が帰って来るのです。やはり心のなかでは愛し慕っていたのに、前の夫はつれなく去ってしまうので、女は後を追いかけます。
しかし追いつけずに、指の血で「私の方では愛しても愛してくれないで私の許を離れ去った人を、引きとめることができないで、私の身は今ここで消え果ててしまったようです」(石田譲二訳)という意味の歌を岩に書き付けると死んでしまうのです。
「梓弓」に砧は登場しませんが、空閨、3年、死など話の内容が「砧」と実によく似ています。それだけじゃ~ありません。「砧」の小書こがきは「梓之出」というのです。明らかに「砧」には『伊勢物語』の「梓弓」が投影されています。ですから題箋の「在原業平」はこれで正しいのです。

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