現代、根来塗に対する評価はきわめて高いものがある。かつて小松氏は、その発端を近代数寄者の茶道愛好に求めたが、今回改めて調査した結果、昭和三十年代に入って盛んに開催された展覧会が大きな役割を果たした事実を突き止めた。
とくに昭和三十三年、熱海美術館で開かれた特別展は重要で、その豪華図録に寄せられた溝口三郎氏の論文は、今なお学問的光輝を失っていない。和様式、中国様式、折衷様式という様式的三分類法が、きわめて有効に機能するためであり、取り上げた九点の作品も、これにしたがって分類することが可能であるという。小松氏は今後、朱漆器全体の歴史のなかで根来塗を考察することの必要性を提唱して結論としている。

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