すみだ北斎美術館「北斎をめぐる美人画の系譜――名手たちとの競演」<11月24日迄>
かつて饒舌館長が葛飾北斎の口演をやったこともあるすみだ北斎美術館では、「北斎をめぐる美人画の系譜――名手たちとの競演」という魅惑の浮世絵特別展が開かれています。まずは館長の大久保純一さんと、キューレーターの山際真穂さんの巻頭論文から始まるすばらしいカタログの「ごあいさつ」によって、展覧会の趣旨を知ることにしましょう。
現代では、北斎というと「冨嶽三十六景」をはじめとする名所絵(風景画)で有名ですが、寛政一二年(一八〇〇)の洒落本『大通契語だいとうけいご』では、美人画の名手として取り上げられるほど世に認められていました。本展では、美人画の名手としての北斎のルーツと、その画風の変遷に注目します。 北斎が浮世絵の世界に足を踏み入れた際に師事した勝川春章も美人画の名手で、「春章一幅直千金」 (洒落本『後編風俗通』、安永四年<一七七五>)という高い評価を受けていました。北斎は、肉筆画を専門 にし、繊細で優美な美人画風を特徴とする宮川長春、その弟子の宮川(勝宮川)春水、そしてその弟子の春章という、美人画の正統の流れに位置付けられます。

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