2025年11月29日土曜日

すみだ北斎美術館「北斎をめぐる美人画の系譜」10

 


 此の梅歌といえるは、其のむかしは北の方(吉原)にて何やの誰といいしさる■の女郎なりしが、少し訳ありて、此の里へ来りし也。彼の廓<くるわ>に有りし時分より、此の客と色事にて、たがいにあだしのの露とともに消えて、未来で添おうの何のかのという仲とはなりにけり。一体器量もよくたおやかにして、宗理もこれが為に筆を断ち、かの京橋がたくみ(山東京伝)もこれが為に筆を投げ、憐れむべし飛燕新粧に倚るの風情、隅田川の水に染みし人柄なり。まだ里の風を好み、板締めの胴に、袖と裾とへ金入の接はぎし額むく。一際目立つ言葉がら。

 *■のところには/\を2つ重ねたようなマークが入っています。これは「吉原細見」で最高格の遊女である「よびだし」を表わすマークです。「額むく」の「むく」は他動詞の「向く」で、額<ひたい>を向けるの意味かな?

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すみだ北斎美術館「北斎をめぐる美人画の系譜」10

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