喜多川相説の「僕の一点」は「芥子図屏風」(個人蔵)ですね。1975年展のとき見て、相説のマイベストワンに決めた小ぶりの金地屏風です。相説が法橋に叙せられて間もなくのころ、教えを受けた宗雪への原点回帰をはかった作品とみなしたらどうでしょうか。宗雪は師宗達の影響もあって、みずからの号にある「雪」のような胡粉を愛して止まなかった画家でした。
この屏風において相説は、胡粉をきわめて効果的使っていますが、それはまるで宗雪「秋草図屏風」(東京国立博物館)へ捧げられたオマージュのようです。また明らかに「宗雪土坡」に対する愛惜の情が感じられるでしょう。事実、嶋崎丞先生は相説が宗達・宗雪の直系であることを世に問うためにも、金地を選んだのであろうとされているのです。
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