2024年10月21日月曜日

サントリー美術館「英一蝶」8

 

和漢融合を完成させて狩野派を飛躍的に発展させた狩野元信には、本格的仏画ともいうべき「白衣観音図」(ボストン美術館蔵)が知られています。一蝶の師であった狩野安信などは、このような仏画をもう制作しなかったと思いますが、狩野派の原点にはこの元信みたいな仏画があったのです。

「摸古を愛す」という朱文方印を愛用した一蝶は、古き狩野派のレパートリーであった仏画をみずからの画嚢に取り込んで、狩野出身者としての誇りを保持しようとしたのではないでしょうか。今回のサントリー美術館「没後300年記念 英一蝶」展には、すばらしい「地蔵菩薩像」(メトロポリタン美術館蔵)が、美しいピンクの雲に乗ってニューヨークから飛んできてくれました。三宅島に流される前、僕が「幇間絵師時代」と呼んでいる初期の傑作です。


0 件のコメント:

コメントを投稿

出光美術館(門司)「琳派の系譜」7

愛用する『能・狂言事典』(平凡社 1987年)から、「高砂」の「鑑賞」を引用することにしましょう。 編者のお一人である羽田昶さんは、能謡曲にまったく無知であった僕を親切に教導してくださった恩人です。 「光琳と能」「宗達と能」といった拙論をまとめることができたのも、ひとえに羽田さん...