2024年10月19日土曜日

サントリー美術館「英一蝶」6

 

江戸からの隔絶が、現実感に満ちた描写を一蝶から奪ったわけでは決してありませんが、鐘一つ売れぬ日のないその都市はあまりに遠すぎたのです。それは一蝶が三宅島で見た白昼夢だったのです。それが画面に影を落したとしても、不思議でも何でもないでしょう。

その意味で、島一蝶には画家の心情が投影されているように思います。享楽的な風俗を主題としながら、その表層をなぞったものではないのです。ともに遊んだ友人たちからの注文画であったとしても、いささかの私的性格が看取されるのです。ここに島一蝶風俗画の素晴らしさがあるのだ――と思います。

0 件のコメント:

コメントを投稿

出光美術館「トプカプ・出光競演展」2

  一方、出光美術館も中国・明時代を中心に、皇帝・宮廷用に焼かれた官窯作品や江戸時代に海外へ輸出された陶磁器を有しており、中にはトプカプ宮殿博物館の作品の類品も知られています。  日本とトルコ共和国が外交関係を樹立して 100 周年を迎えた本年、両国の友好を記念し、トプカプ宮...