江戸からの隔絶が、現実感に満ちた描写を一蝶から奪ったわけでは決してありませんが、鐘一つ売れぬ日のないその都市はあまりに遠すぎたのです。それは一蝶が三宅島で見た白昼夢だったのです。それが画面に影を落したとしても、不思議でも何でもないでしょう。
その意味で、島一蝶には画家の心情が投影されているように思います。享楽的な風俗を主題としながら、その表層をなぞったものではないのです。ともに遊んだ友人たちからの注文画であったとしても、いささかの私的性格が看取されるのです。ここに島一蝶風俗画の素晴らしさがあるのだ――と思います。
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