2024年10月9日水曜日

東京都美術館「田中一村展」10

 

代表作の「アダンの海辺」と「不喰芋と蘇鉄」(ともに個人蔵)は、一見眼に美しい華麗なる装飾絵画、あるいは染物や織物のような応用美術にも見えますが、それらから画然と区別し、一村その人の表現に昇華させているのは、微光感覚にほかなりません。アダンの背後、不喰芋の彼方、蘇鉄のしりえに広がる虚空の表現に、目を凝らしてみたいと思います。細心の注意を注がれた筆遣いが、得もいえぬ微妙な光をとらえていることが理解されるでしょう。

それがモチーフに、清新なる生命感を与えているといっても過言じゃ~ありません。それは一村生来の感覚であり、九州・四国・紀州旅行によって発芽した心的受容機能であり、奄美大島で完全に開花した美意識でしたが、考えてみるとチョッと不思議な気がします。

0 件のコメント:

コメントを投稿

東京国立博物館「江戸☆大奥」6

先に「リアリズム」といいましたが、キャプションによると、実際とは異なる描写も含まれているそうです。例えば、 1 月 7 日に鏡餅を下男が曳き歩く「鏡餅曳」を大奥の女性たちが見物していますが、これはフェイクで実際は見物などしなかったそうです。また正月の「追羽根」では女性たちがこれに...