お手紙を読みながら、武田さんに対する尊敬の念が改めて高まるとともに、目頭が熱くなるのを禁じえませんでした。
蘭さんはこの授賞式に武田さんの代わりに、いや、武田さんの魂魄とともに臨まれました。それを事前に聞いていた僕は、どうしても鹿島美術財団美術講演会のあと駆けつけて、蘭さんに心からお悔やみの言葉と、生前受けた学恩への真率なる感謝を直接捧げたかったのです。しかし遺影をいだく蘭さんを前にすると、言葉が詰まってしまい、気持ちの半分もうまく伝えることができませんでした。
それによると、唐の時代、ある人が画家に正午の牡丹を描いてくれと頼んだところ、画家は困ってしまいました。しかしいろいろと考えた末、牡丹の傍らに猫をあしらい、その目をタテにごく細く描いて正午を表わしたというのです。この唐の話が牡丹に猫のはじまりらしいのです。原双桂は「さすれば右の...
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