2021年3月19日金曜日

まちの記憶・蒲田10

 

 しかし人間は悲しいもので、あるいはよくしたもので、すぐに慣れてまったく気にならなくなってしまう。社会生活や家庭生活をともかくも無事送ることができるのは、人間がこの慣れという特技をもっているためなのだろう。これがなかったら、皆ノイローゼになってしまうはずだ。

 「あずま湯」さんには自転車で十五分ほどかかるから、冬は湯冷めをするし、夏はまた汗をかくということになるが、これまたすぐに慣れてしまう。かくしてこの銭湯が、僕にとりなくてはならない大切なオアシスになっている。

 銭湯は日本の文化である。ある定日は女、その他は男と分けて開店する男女入れ込み湯や混浴が禁止され、現在の銭湯形式が生まれたのは、江戸時代、寛政年間のことらしい。それからでも二〇〇年以上の歴史がある。江戸絵画が大好きな僕にとって、銭湯につかることは江戸文化を直接体験することになる。

0 件のコメント:

コメントを投稿

今や北斎・広重とともに「風景版画の3H」とたたえられる川瀬巴水を中心とする新版画展が三菱一号館美術館で開催中です!! 15

  モラエスは「以上諸点の総括」の章でも、 「改革の大演劇」によって「美という美がすべて荒廃しつつある」ことを慨嘆しています。 荒廃 のなかに残るわずかな美を探し求めた、サウダーデの旅の結晶が 『日本精神』 をはじめとするモラエスの著作 だったように感じられます。   旅の画家と...