2020年5月8日金曜日

醍醐書房『視覚の現場』3



僕がディレクターをつとめている静嘉堂文庫美術館には、かの腰巻事件でよく知られる黒田清輝の「裸体婦人像」があります。1900年、パリ万博のために渡欧した黒田は、そこで「裸体婦人像」を制作し、帰国後の翌1901年、第6回白馬会展にこれを出品したのです。

明治維新に続いて近代国家を建設しようとした日本は、ご存知のように中国文明に別れを告げ、西欧文明をモデルとして採用しました。西欧文明の基本には人体があり、したがって西欧美術の根本にはヌードがありました。

それにも関わらず、どうして黒田の「裸体婦人像」や、それに先立つ「朝妝」が猥褻だということになったのでしょうか。ずっと考えてきた問題であり、また私見もあったので、原田さんに甘えて文字にしてみたのです。

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