2020年1月11日土曜日

富士山世界遺産センター「谷文晁×富士山」5




あの理想化された富士を描き続けた横山大観が、『大観自伝』のなかで、ずっとあとからできた宝永山なんかは絶対描かないと述べていることが思い出されます。

この富士山図の意義をさらに高めているのは、二つの賛です。左側にあるのは、本居宣長の養子・大平の和歌賛「日本之山跡[やまと]の国のたからとも神ともあふぐやまと不尽[ふじ]の嶺」ですが、より一層興味深いのは、右側にある漢詩の賛です。

その詩の作者は款記により、琉球使節として江戸へやってきた琉球国官吏・鄭章観だと分かるのですが、筆者の署名はありません。しかし印章が2つ捺されていて、その一つから筆者は文晁が仕えた、かの老中・松平定信であることが判明するのです。これを明らかにしたのは、先の松島さんにほかなりません。

0 件のコメント:

コメントを投稿

東京美術『日本視覚文化用語辞典』3

  前回、東京国立博物館の特別展「蔦屋重三郎 コンテンツビジネスの風雲児」を紹介しましたが、実をいうと後期高齢者の僕には「コンテンツ」の意味がよく飲み込めませんでした。しかしこの辞典にはチャンと「コンテンツ」という項目があって、簡にして要を得た説明がなされています。しかも「マーシ...