2019年10月13日日曜日

東京ステーションギャラリー「岸田劉生展」12


國華創刊百三十年とともに、朝日新聞創刊百四十年を記念する特別展「名作誕生」を寿ぎ、その出品作を中心に、継承と創造の日本美術史を追いかけてきた。継承といっても、さまざまなレベルがあるように感じられたが、しかし創造はただ一つなのだ。西洋の技法を使って、「切通しの写生」という個性美を創造してくれた岸田劉生が、「私の日本画について」というエッセーのなかで、継承と創造――劉生によれば古法と個性について語った一節を引用しながら、筆を擱くことにしよう。

古法に則[のつと]り古法の中に東洋画としての美術的要素の真諦[しんたい]を見出す事は、個性を殺す事でもなくまた自然を軽んずる事でもなく、生命を失う事でもない。個性も自然も生命も凡[すべ]て、芸術上にあっては第二の事で、第一の問題は「美」である。

 ところで、東京ステーションギャラリー展のゲスト・キューレーターは京都市立美術館の山田諭さんであり、その彼が「岸田劉生の道」という栄えある記念講演を行なっています。それは僕にとって、とてもうれしいことでした。40年ほど前、僕が名古屋大学で教えていたとき、山田さんは学生の一人だったんです!!


0 件のコメント:

コメントを投稿

東京美術『日本視覚文化用語辞典』3

  前回、東京国立博物館の特別展「蔦屋重三郎 コンテンツビジネスの風雲児」を紹介しましたが、実をいうと後期高齢者の僕には「コンテンツ」の意味がよく飲み込めませんでした。しかしこの辞典にはチャンと「コンテンツ」という項目があって、簡にして要を得た説明がなされています。しかも「マーシ...