2019年7月16日火曜日

山種美術館「速水御舟」7


*速水御舟「苦難時代を語る」(『美術新論』昭和610月号)

次に画の上での苦悩を救ってくれたことは――同門の諸君 と団栗会というのを作った。日曜の度毎に、二三銭の会費で、 郊外へ写生散歩をしようという、小茂田青樹、黒田古郷、田中咄哉、小山大月、牛田鶏村などという人達である。ごく卑近なところから名をつけたのだが、会の内容的な動きはなかなか高遠な理想に燃え、且つ厳正な研究的精神に高まっていた。一日団栗会が気転のどんぐり山で催された。そこで小茂田君は私の画の辛棘な批評をしたものである――君の絵は理想化することが強く、君は絵を作りすぎる。桜に花を咲かす。 爛漫とした趣のみを君は描こうとする。が実在はもっときたなくて垢がある。爛漫の梅にも虫食もあれば、やにもあろう。一面皮肉な物の言い方ではあるが理解してみれば真実である。私は中島(光村)さんの言葉以外、こんな有意義な言葉をきいたことはない。美の対蹠的意識である醜を知らないで、美は成立つものではない。私は未だに一代の教訓としてこのことを感銘している。ややともすると理想化する気持が強く、真を掴もうとする意識を与えられたのであった。私を根本的に立ちなおらせる楔となったものである。先輩や友人は持つべきものである。


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