2018年11月29日木曜日

鹿島美術財団講演会「グローバル時代の東西」7


いずれにせよ、東大寺南大門とそこに安置される金剛力士像が、ともにその後ほとんど受け継がれなかったという事実は実に興味深く、そこには日本美術の秘密が隠されているようにも感じられるのです。

小林さんの発表でもっともおもしろいと思ったのは、17世紀から18世紀にかけて活躍したスペイン植民地時代のメキシコ人画家であるクリストバル・デ・ビリャルパンドの作品でした。そこには、マニエリスム様式とバロック様式が併存しているからです。

それは中国文化を学んだ日本文化のなかに、中国の時代相を異にする文化が併存していることを思い出させてくれます。

たとえば、南宋の文化である抹茶と、明の文化である煎茶がともに我が国で愛好されているように……。古い言葉は中央で消滅しても、その周辺に長く残存するという、柳田國男が『蝸牛考』で主張した定理は、やはり本当だったんだと思いながら、僕は耳を傾けていました。

0 件のコメント:

コメントを投稿

渡辺浩『日本思想史と現在』7

しかし渡辺浩さんは、先行研究が指摘した二つの点について、高橋博巳さんの見解が示されていないことが、やや残念だとしています。その先行研究というのは、大森映子さんの『お家相続 大名家の苦闘』(角川選書)と島尾新さんの『水墨画入門』(岩波新書)です。 僕も読んだ『お家相続 大名家の苦闘...