2018年11月27日火曜日

鹿島美術財団講演会「グローバル時代の東西」5


その前に立つ誰しもが、その勇姿に深く心を動かされるところです。それは金剛力士像の美意識と、何とよく呼応していることでしょうか。

ところで、このような東大寺南大門の力動感は、その非常に合理的な建築様式によって生み出されているのです。外観は二重ですが、柱はすべて上まで伸び、下層の屋根は指し掛けとして造られているにすぎません。太い柱に太い貫「ぬき」を数多くがっしりと通し、挿肘木[さしひじき]で六手先[むてさき]まで斗栱を強化して大きな屋根を支えています。

軒は単純な一軒[ひとのき]とし、隅扇垂木[すみおうぎだるき]にしています。日本人が好む目に美しい平行垂木に比べて、扇垂木の方が構造的に強く、合理的であることは、改めて指摘するまでもありません。金剛力士の間に立って上を見上げれば、天井などという構造本体と無関係な装飾はなく、はるか上方に基本構造の一つである大虹梁までが見通せます。

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