2018年1月3日水曜日

前方後円墳3


その基本にあるのは、中国の「天圜地方」思想です。天の形は円く、地の形は方形、つまり四角であるという考えです。『諸橋大漢和辞典』を引いてみると、『呂氏春秋』が引かれ、「天道は圜、地道は方、聖王これを法とす……」とありますから、中国における古く重要な思想であることが分かります。僕は『諸橋大漢和辞典』によって「天圜地方」と書くことにしていますが、「円」と「圜」は同音同義ですから、「天円地方」でもまったく構いません。

前方後円墳はこの天圜地方思想と密接な関係に結ばれているというのが僕の意見です。形式は日本独自ですが、そのコンセプトは中国思想を抜きに考えられません。もちろん、僕が最初に思いついたアイディアというわけではなく、すでに複数の研究者が指摘しています。

前方後円墳に関する書物や論文は、汗牛充棟の感がありますが、その起源について、これまでどんな見解が発表されているかを知るには、藤田友治編『前方後円墳 その起源を解明する』<シリーズ古代史の探求3>(ミネルヴァ書房 2000年)がもっとも便利です。

0 件のコメント:

コメントを投稿

渡辺浩『日本思想史と現在』4

しかしここには、渡辺思想史学の特質が端的に示されています。それは洋の東西を自由に行き来する、ものすごい健脚ぶりです。広やかな視覚といってもよいでしょう。『日本思想史と現在』という書名になっていますが、日本に限定されることなく、その国境を越えてしなやかに抜け出ていくのです。だから読...