2017年11月15日水曜日

静嘉堂文庫美術館「あこがれの明清絵画」6


04『源氏物語』若菜上(与謝野晶子訳)
支那の産の猫の小さくかわいいのを、少し大きな猫があとから追って来て、にわかに御簾の下から出ようとする時、猫の勢いに怖れて横へ寄り、後ろへ退こうとする女房の衣ずれの音がやかましいほど外へ聞こえた。この猫はまだあまり人になつかないのであったのか、長い綱につながれていて、その綱が几帳の裾などにもつれるのを、一所懸命に引いて逃げようとするために、御簾の横があらわに斜に上がったのを、すぐに直そうとする人がない。

05万里集九「猫児双蝶図」(『万里集九集』6)
咲き定まりたる牡丹花は ほかの花とは交わらず
  日なかの木陰傾くも 母ネコ眠らず子のために
  誰かが見てる春の夢 蝶々[ちょうちょ]のはかない羽のよう
  鋭い牙にもかからずに 二匹の蝶が悠々と……

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太田記念美術館「鰭崎英朋」3

 鰭崎君(英朋)が画いたのは、この増補の「恵の花」英泉挿絵入の分で、まだ北廓に内芸者でいた米八が、向島の田舎家で、恋中の丹次郎との媾曳 あいびき に、障子を開けて庭先の梅の莟を口に含む。よく人の知る婀娜たる画面をよく格を保って写し得た。(略)  今、こうして時を隔てて烏合会のこと...