2017年8月14日月曜日

静嘉堂文庫美術館「私の好きな茶道具ベスト10」17<寸松庵色紙>1


 ⑨伝紀貫之「寸松庵色紙」――寸松庵色紙は、『古今和歌集』の四季の歌を書写した冊子本の断簡です。茶人の佐久間将監真勝[さねかつ]が、そのうちの12枚を手に入れ、大徳寺塔頭の龍光院に建てた茶室・寸松庵の壁に貼って、日々慈しんでいたと伝えられています。筆者を紀貫之と伝えてきましたが、平安後期、王朝時代の書写と考えられています。「継色紙」「升色紙」とともに三色紙とたたえられてきました。

静嘉堂文庫美術館コレクションの1枚は、「さきそめしやとしかはれはきくの花いろさへにこそうつろひにけれ」――紀貫之の歌で、『古今和歌集』では「人の家なりける菊の花を移し植ゑたりけるをよめる」という詞書があります。

小学館版『日本古典文学全集』では、「最初に咲いていた家から新しい家にかわったものだから、場所が移ったのはいうまでもなく、菊の花の色までが移ろってしまったのは、さてさて情けないことだ」と現代語に翻訳しています。

もちろんその通りですが、ここにはもっと複雑な掛詞や縁語のテクニックが隠されているように思います。まず「さき」は「咲き」ですが、「先」と同音で「初め」の縁語となり、「先の家」を思い起こさせます。「そめ」は一義的に「初め」ですが、同時に「染め」で、「色」の準縁語になっています。

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