2017年4月6日木曜日

五山文学の春3


その『蕉堅藁』を通読して、僕はとくに春をたたえた詩、春に詠まれた詩に心を動かされました。時あたかも春、またまた僕の戯訳でいくつか紹介することにしましょう。

僕の選んだベストワンは、「春夜月を看る」という七言絶句です。この花は桜じゃなく、梅でしょう。月や香りと相性がいいのは梅ですから……。気心の知れた友達と早春の宵に観梅を楽しむ――いいですねぇ。当然、般若湯もやっているわけですよ。なお、№は入矢先生が振った『五山文学集』の通し番号です。

春夜月を看る(『蕉堅藁』№101
 高士の招いた友人が 集まる四阿[あずまや]春の宵
 盛りも過ぎた花の影 庭一面の月光よ!!
 くまなく霜が降りたよう 花の香[]の風 袖に入る
 後期高齢者たちの 期待を超える素晴らしさ

 転句「満袖の香風吹いて藹藹」を上のように訳したのは、『諸橋大漢和辞典』に「藹藹」を求めると、ほんのりとした月光のさまとあり、司馬相如の「長門賦」を引いて、「中庭の藹藹を望めば、季秋の降霜のごとし」とあるからです。また、結句の「衰齢」を「後期高齢者」と訳したのは、間もなく僕がそれになるからです!? 

0 件のコメント:

コメントを投稿

東京美術『日本視覚文化用語辞典』3

  前回、東京国立博物館の特別展「蔦屋重三郎 コンテンツビジネスの風雲児」を紹介しましたが、実をいうと後期高齢者の僕には「コンテンツ」の意味がよく飲み込めませんでした。しかしこの辞典にはチャンと「コンテンツ」という項目があって、簡にして要を得た説明がなされています。しかも「マーシ...