2023年2月24日金曜日

『美術商・林忠正の軌跡』8

 もちろんこの問題は、当時の我が国知識人もチャンと気がついていました。夏目漱石は「現代日本の開化」(岩波文庫『漱石文明論集』)という文章のなかで、次のように述べています。

日本の現代の開化を支配している波は西洋の潮流で、その波を渡る日本人は西洋人ではないのだから、新しい波が寄せる度に自分がその中で食客いそうろうをして気がねをしているような気持になる。新しい波はとにかく、今しがた漸ようやくの思いで脱却した旧い波の特質やら本質やらも弁わきまえるひまのないうちに、もう棄てなければならなくなってしまった。……我々のやっている事は内発的でない、外発的である。これを一言にしていえば、現代日本の開化は皮相、上滑りの開化である。

 

0 件のコメント:

コメントを投稿

出光美術館「復刻 開館記念展」7

  このような器形を一般に「梅瓶」と呼んでいます。梅を生けるのによく用いられた花瓶であるところから、梅瓶と呼ばれるようになったというのが通説のようです。しかしカタログ解説によると、中国の『源氏物語』ともいわれる長編小説『紅楼夢』のなかに、瓶に梅を生けて観賞するシーンがあり、それが...