2022年4月12日火曜日

佐藤康宏『若冲の世紀』5

 

これに対し、佐藤さんの『若冲・蕭白』は、とくにその「蕭白新論」はきわめて上質な学術論文に仕上げられていたんです。

新鮮な佐藤蕭白像を生み出す上で、もっとも効果を発揮したのは、きわめて重要な漢詩の発見でした。京都で活躍した儒学者、藤原光興こと松波酊斎の遺稿集『藤酊斎先生詩集』に収められる七言古詩「蕭白道人に画を請いて贈る」が、それにほかなりません。

珍しくも着賛のある蕭白画として「峨眉山月図」がすでに知られていましたが、その賛者は判っていませんでした。佐藤さんはその賛者が松波酊斎であることを突き止め、遺稿集からこのオマージュ詩を見つけ出してきたんです。

0 件のコメント:

コメントを投稿

出光美術館「トプカプ・出光競演展」2

  一方、出光美術館も中国・明時代を中心に、皇帝・宮廷用に焼かれた官窯作品や江戸時代に海外へ輸出された陶磁器を有しており、中にはトプカプ宮殿博物館の作品の類品も知られています。  日本とトルコ共和国が外交関係を樹立して 100 周年を迎えた本年、両国の友好を記念し、トプカプ宮...