もちろん張瑞図が意識してヤマネコを描いたかどうか――だれにも分かりません。あるいは無意識だったかもしれませんが、フロイトによれば、無意識にも意味があるんです。中国の文人は、書物をネズミの害から守るため、好んでネコを飼っていました。例えば北宋の詩人・梅尭臣が飼っていた<五白>は、たくさんあるネコ漢詩のなかで、もっとも著名なネコです(!?) きっと4本の足先とシッポの先が白いネコだったのでしょう。
張瑞図がネコを飼っていたかどうか知りませんが、そのような文人とネコの関係がここに反映しているというのが、饒舌館長の見立てです。
似た遊びを意識的に行なった傑作に、鈴木其一の「蓬莱山図」(アメリカ・カウンティ美術館蔵)があって、僕はこれを「霊鷲山効果」[りょうじゅせんこうか]と呼んでいるんです。
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