2018年10月7日日曜日

『君たちはどう生きるか』9


若き諸君の夢と希望を打ち砕くような一言だが、自分では如何ともし難いという点で、人生は賭けだと同じようなニュアンスを持っている。ただ、「できるのはその先頭に立つことだけだ」と続けるところが、いかにもドラッガー先生らしい。

人生は賭けだから、駄目だったら次の勝負に出ればいい。僕は美術館や博物館に就職した学生に対してだが、「最低3年、できたら5年」と言ってきた。それだけつとめて、自分に合っていると思ったら続ければよいし、馴染めなかったら次の道を探せばいい。オファーがかかって最初の職を一年半で辞めてしまった僕だから、大きなことは言えないのだが、この時は両方の職場の先輩どうしで話し合ってもらって、ただその結論に従っただけだった。これも他人任せという点で、やはり賭けそのものだった。

就活で悩む諸君に、勧めたいと思う人生論の本などほとんどない。世評の定まった名著はあるが、むしろ就職が決まったあとで読む方がいい。もし一冊挙げるとすれば、人生は賭けだからではないが、色川武大氏の『うらおもて人生録』(新潮文庫)だ。とくに「九勝六敗を狙え――の章」を読めば、きっと元気が出てくる。うまくいくことを祈っている。

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