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2019年4月7日日曜日

小林古径が小倉遊亀へ3


ここで再度ところが、遠山記念館所蔵の古径作品と、この遊亀作品の写真を比べると、細部まで完全に一致しており、同一の作品であることが明らかなのです。ただ、落款だけが異なり、よく見るとその位置も微妙に違っています。

ここから導かれる活論は、小野さんの指摘どおり、『国画』掲載のあと、遠山記念館創立者である遠山元一氏がコレクションに加えるまでの間に、何ものかが――もっとも疑われるのは関係した美術商でしょうが――高く売るために改作の手を加えたというストーリーでしょう。

遊亀の落款は画面右下ギリギリのところにありますから、数センチを断ち落とし、本来ならその左脇にあたるあたりに、ニセ落款を加えれば、何倍にも高くなる古径筆「白菜」にヘンシーンというわけです。


2019年4月6日土曜日

小林古径が小倉遊亀へ2


 ところが、先日送られてきた「遠山記念館だより」56号を見ると、この絵が表紙に大きく印刷され、その下に「小倉遊亀筆『菜』」と書いてあるじゃーありませんか。一瞬目を疑いましたが、小野恵さんの「館蔵品紹介」を読んで、その理由がよく分かりました。

分かりましたが、驚きはさらに大きくなりました。しかもきわめて面白いニュースです。凸版カレンダーを引っ張りでしてくると、9月/10月を飾るのが確かにこの傑作、さっそく「饒舌館長」に紹介することにしたという次第です。

 この事実を指摘したのは、東京国立近代美術館の鶴見香織さんだそうです。美術雑誌『国画』昭和17年(19425月号に、この作品が小倉遊亀の「菜」として掲載されていることを発見したのです。先の白文方印と同じように、業界で朱文方印と呼ぶハンコの印文までは判りませんが、「遊亀」というサインだけははっきりと読めます。この年に開催された「日本美術院同人軍用飛行機献納作品展」のために、制作された作品のようです。

なお、小野さんも鶴見さんもかつて『國華』でお世話になったことがある、すぐれた女性美術史研究者です。

2019年4月5日金曜日

小林古径が小倉遊亀へ1


小林古径が小倉遊亀へ(『遠山記念館だより』56号)

 小林古径は僕がもっとも好きな近代画家の一人です。そのなかでもっとも好きな絵が、遠山記念館が所蔵する「白菜」です。面取りされた薄いグレーのガラス器に、白菜と青梗菜と蕪を盛ったところを、背景は素地そのままにして描いた一点です。実にいい! 得もいえず素晴らしい!! 古径の傑作だ!!! 画面右下には、「古径」というサインがあり、「古径」と彫られた、業界で白文方印と呼んでいるハンコが捺されています。 

ただし現物を見た記憶はなく、僕が魅了されたのは、古径作品を集めた2016年版凸版印刷カレンダーによってです。カレンダーなんて、普通は壁に掛けて使い切ってしまうか、年末年始にまとめて逗子市役所の「自由にお持ち帰りください」と書かれた交換ボックスに持っていくだけです。

しかしこの凸版カレンダーは、その一点のためにだけ、大切に仕舞ってありました。仕舞ってあるといっても、凸版カレンダーは特大のため、スチールボックスと壁の間に立ててあるだけですが……。

2019年4月4日木曜日

静嘉堂文庫美術館「春のコンサート」8


この美術と音楽は、どの地域、どの民族においても、もっとも早く誕生した文化であり、だからこそ、両者はとても相性がいいのです。美術館でミュージックコンサートを開くことは、とても理にかなったイベントなのです(!?)

もちろん最後に、例の天心『國華』創刊の辞――「ソレビジュツハクニノセイカナリ。コクミンノソンケイ、キンボ、アイチョウ、キボウスルトコロノイショウ、カンネン、コンカギョウケツシテ、ケイショウヲナシタルモノナリ」を、音吐朗々とやりました。

これまた例のごとく、ポカンとしている皆さんに、「たいていここで拍手が起こるものですが……」とかまして笑いを取りましたが、今日のコンサートをコーディネートしてくれた上田事務長は、「饒舌館長がまた懲りずにやってるわ」と苦笑いしたにちがいありません() 

2019年4月3日水曜日

静嘉堂文庫美術館「春のコンサート」7


皆さんよりもうちょっと年かさだったと思いますが、昭和46年から54年まで、僕は東京国立美術研究所の研究員をやっていました。その8年半のあいだ、ほとんどランチは東京藝術大学の大浦食堂でとっていたこと、お好みは「バタ丼」であったことを話すと、皆さんが急にシンパシーを感じてくれるように思われました。

調子に乗って、東京藝術大学の前身である東京美術学校を創立したのは岡倉天心であることから始めて、その天心が『國華』という美術雑誌を創刊したことへと話をもっていったのですが、皆さん『國華』をまったくご存じない様子でした。

そこで、『國華』の宣伝を兼ねて、世界でもっとも長く発刊され続けている美術雑誌であることを話しました。これは我が国が美の国であることを象徴するものであり、美術の国であることのエビデンスなのです。



2019年4月2日火曜日

静嘉堂文庫美術館「春のコンサート」6


その音色をとおして、マサキの草笛という子どものころの思い出と結びついたために、「春のメドレー」が一番印象深かったのかもしれません。いずれにせよ、「クィンテット レグロ」の演奏する木管楽器は、日本の曲にこそふさわしいように感じられたのです。この日帰宅するとき、近所のお宅のマサキの葉を失敬して草笛を作り、思い切り鳴らしてみました。もう完全に70年前のボクでしたね()

演奏終了後、皆さんが館長室を訪ねてくださいました。残念ながらちょっと曇っていて、霊峰富士を仰いでもらうことはできませんでしたが……。5人とも大学院の博士課程だそうですが、若さというのは、もうそれだけで素晴らしい。ポール・ニザンの名言は、逆説としてのみ成り立つのだと思います。いずれにせよ、もちろん僕にもそういう時代があったのです()

2019年4月1日月曜日

静嘉堂文庫美術館「春のコンサート」5


もっとも、ホルンは金管楽器ですが、角笛から次第に進化したためか、柔らかさと潤いに満ち、木管五重奏に加えられて用いられるそうです。

ホルン以外の皆さんは、楽器からリードの部分を外して、それだけを吹き鳴らしてくれましたが、みな葦で作られるそうです。「リード」を『広辞苑』で引くと、「簧[した]」を見よとあり、「簧」をを引くと、「舌」の意味で、楽器に装置する板状の薄片と出てきます。

それを聞いていて僕は、子どものころ作って鳴らした、マサキの葉の草笛を思い出しましたが、とてもよく似た音色なのです。もちろんそれで曲を演奏することはできず、ただ鳴らすだけだったのですが、音色にはどこか共通するものがあります。

絶滅写真作家(!?)杉本博司さんの魅力を改めて感じさせてくれる特別展が竹橋で開催中です!!8

    僕 は 杉本さんの写真以外のお仕事をほとんど知らない ん です。 もっとも 料理については、 『趣味と芸術――謎の割烹 味占郷』(ハースト婦人画報社 2015年)を拝見して、感を深くしたことがありました。   杉本さんの手になるお料理は、 どれもこれもじつに旨そうな ん ...