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2024年8月14日水曜日

すみだ北斎美術館「北斎グレートウェーブ・インパクト」5

 


「賀奈川沖本杢の図」や「おしおくりはとうつうせんのづ」などの文化年間の初期から中期にかけて発表されたと推定される洋風風景版画群には、高まる波涛やせり上がる崖、伸び行く松や樹林などに立ち上がる躍動的なムーブメントがあらわされており、上方へ伸びゆく「伸暢感覚」が北斎の構成感覚の根底に根付いているとする見方がある。

確かに、「芥子」などの花鳥画や「百物語」といった妖怪絵など、風景を描いた名所絵ではないジャンルにもその「伸暢感覚」が垣間見えており、「伸暢感覚」が北斎の感覚の根底にあったという主張もうなずける。

2024年8月13日火曜日

すみだ北斎美術館「北斎グレートウェーブ・インパクト」4

 

そのなかで奥田さんは、北斎の「伸暢感覚」という僕の持論に賛意を示してくれています。30年ほどまえ、至文堂版「日本の美術」の1冊として、小林忠さんから『北斎と葛飾派』を依頼されたとき、北斎にはモチーフを上へ上へと引き伸ばしていこうとする、もって生まれた独自の形態感覚があったという妄想と暴走を書いたんです。

これを「伸暢感覚」と名づけたのですが、グレートウェーブをはじめ、北斎風景版画の独特なフォルムに関する諸問題が、これを補助線に使えばたちどころに解決しちゃうんです。奥田さんはさらに僕の思いつかなかった花鳥画や妖怪絵まで、つまり風景版画以外にも発展させて、次のように指摘しています。

2024年8月12日月曜日

すみだ北斎美術館「北斎グレートウェーブ・インパクト」3


事実、展示されていた「日本銀行 改刷のお知らせ」というポスターをみると、メインイメージに選ばれたのはグレートウェーブで、東京駅は月にぼんやりと浮かんだ月宮殿(!?)と、浪のかなたの蜃気楼として使われているだけです。

 「僕の一点」はもちろんグレートウェーブ、すみだ北斎美術館が誇る初摺り――空に薄い茜色の雲がはっきりと見える初摺りのゼッピンが劈頭を飾ります。世界でもっとも多くの人が知っている名画は、グレートウェーブと「モナ・リザ」だそうですが、どうしてこんな傑作が葛飾北斎という一人の浮世絵師により、19世紀、極東の江戸で創り出されたのでしょうか?

 その秘密は、チーフキューレーターをつとめた奥田敦子さんのカタログ巻頭論文「葛飾北斎『神奈川沖浪裏』の成立と影響について――その波はどこから来て、どこへ行くのか」が解き明かしてくれます。グレートウェーブからも影響を受けたにちがいない、ポール・ゴーガンの傑作をパクッたタイトルも洒落ています。 

2024年8月11日日曜日

すみだ北斎美術館「北斎グレートウェーブ・インパクト」2

 

昨日掲げた開催趣旨は、この特別展カタログから「ごあいさつ」の一部を引用したものです。そこにあるように、本展は「新1000円札グレートウェーブ採用記念特別展」だといっても過言ではありません。

しかし独断と偏見をいえば、「グレートウェーブ」は当然10000円札の図柄にするべきだったと思います。10000円札の裏面は東京駅で、これも辰野金吾の名建築だとは思いますが、これからの日本が頼るべきインバウンド効果の点では、絶対グレートウェーブでしょう。

10000円札の裏面が東京駅になったのは、美術ヒエラルキーの頂点に建築を位置づける西欧的観念によるところかもしれませんが、去年グレートウェーブがニューヨーク・クリスティーズにおいて36千万円で落札されたそうですから、「日本資本主義の父」とたたえられる渋沢栄一と一番相性がよいということになります( ´艸`) 

2024年8月10日土曜日

すみだ北斎美術館「北斎グレートウェーブ・インパクト」1

すみだ北斎美術館「北斎グレートウェーブ・インパクト 神奈川沖浪裏の誕生と軌跡」<825日まで>

 今もっとも人気のある浮世絵師が葛飾北斎です。これまで日本で、いや世界で、無数の「葛飾北斎展」「北斎冨嶽三十六景展」「北斎肉筆展」が開かれてきました。しかし「冨嶽三十六景」シリーズの「神奈川沖浪裏=グレートウェーブ」ただ一点に的を絞った特別展は、空前にして絶後です。

いや「グレートウェーブ」の圧倒的人気を考えると、絶後とはいえないかもしれませんが、本展を凌駕するようなキューレーションはきわめて難しいでしょう。本展開催の趣旨はつぎのとおりです。

202473日、20年ぶりに新紙幣が発行されます。そのうち千円札の裏面に北斎の「冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏」が図柄として採用されます。本展は新紙幣採用を記念して、「冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏」がどのような背景で誕生したか、またその図柄がさまざまに利用されてきた軌跡をたどり、海外で「グレートウェーブ」の通称で親しまれる影響、広がりを紹介します。

2024年8月9日金曜日

出光美術館「日本・東洋陶磁の精華」7

 

全体をながめると、大きな花から3本の茎が伸びて花をつけているように見えますが、そうではなく、葛飾北斎の花鳥版画を代表する「芥子」のように、大きな花の向こう側に3本が伸びてきているのだと考えれば、モンゴルのキクとみてよいかもしれません。

しかし、八重と一重という点が決定的に違っています。ネット画像による限り、モンゴルに八重のキクはないようです。仕方がないので、「コパイロット」に写真を貼り付けて訊いてみました。答えは「セリ科の植物であろう」とのことでした。今はやりの生成AIにより、出光美術館所蔵「白地緑彩草花文長頸瓶」に描かれたモチーフが遂に判明せり( ´艸`) セリといえば、以前「朝日歌壇」に載った高井勝巳さんという方の忘れがたき一首がありました。

  田に水の満ちゐし夕べ芹の香と蛙の声をあてに呑む酒

2024年8月8日木曜日

出光美術館「日本・東洋陶磁の精華」6

 


主任学芸員・福留大輔さんが中心になって編集したカタログ解説によると、近代の日本ではこの長頸瓶に描かれる植物を葱の花に見立て、親しみを込めて「葱坊主ねぎぼうず」と呼び愛玩したそうです。三上次男先生も葱科の植物であろうとされています。

しかし、子供のころの思い出に残っている葱坊主とはかなり違っているので、ネット画像に「モンゴル 草花」と入れて検索をかけてみました。その結果一番近かったのは、黄色いキクでした。

それはブログ「還暦からのネイチャーフォト」<モンゴル砂漠旅植物編>に「ミズギクに似た花 ウランバートル郊外に多かった」としてアップされています。とくに長頸瓶正面の一番高く伸びた1本は、そのツボミによく似ているように感じられました。

絶滅写真作家(!?)杉本博司さんの魅力を改めて感じさせてくれる特別展が竹橋で開催中です!!8

    僕 は 杉本さんの写真以外のお仕事をほとんど知らない ん です。 もっとも 料理については、 『趣味と芸術――謎の割烹 味占郷』(ハースト婦人画報社 2015年)を拝見して、感を深くしたことがありました。   杉本さんの手になるお料理は、 どれもこれもじつに旨そうな ん ...