2024年8月12日月曜日

すみだ北斎美術館「北斎グレートウェーブ・インパクト」3


事実、展示されていた「日本銀行 改刷のお知らせ」というポスターをみると、メインイメージに選ばれたのはグレートウェーブで、東京駅は月にぼんやりと浮かんだ月宮殿(!?)と、浪のかなたの蜃気楼として使われているだけです。

 「僕の一点」はもちろんグレートウェーブ、すみだ北斎美術館が誇る初摺り――空に薄い茜色の雲がはっきりと見える初摺りのゼッピンが劈頭を飾ります。世界でもっとも多くの人が知っている名画は、グレートウェーブと「モナ・リザ」だそうですが、どうしてこんな傑作が葛飾北斎という一人の浮世絵師により、19世紀、極東の江戸で創り出されたのでしょうか?

 その秘密は、チーフキューレーターをつとめた奥田敦子さんのカタログ巻頭論文「葛飾北斎『神奈川沖浪裏』の成立と影響について――その波はどこから来て、どこへ行くのか」が解き明かしてくれます。グレートウェーブからも影響を受けたにちがいない、ポール・ゴーガンの傑作をパクッたタイトルも洒落ています。 

0 件のコメント:

コメントを投稿

出光美術館(門司)「琳派の系譜」7

愛用する『能・狂言事典』(平凡社 1987年)から、「高砂」の「鑑賞」を引用することにしましょう。 編者のお一人である羽田昶さんは、能謡曲にまったく無知であった僕を親切に教導してくださった恩人です。 「光琳と能」「宗達と能」といった拙論をまとめることができたのも、ひとえに羽田さん...