ここで思い出したのは、これまた半世紀近くまえ京都四条河原町の丸福商店で見た「源氏貝」です。蒹葭堂旧蔵本と同じような貝の標本ですが、その趣向がじつにおもしろいんです。箱を区画して本物の貝を入れ、それを覆う紙も同じように罫線で区切り、そこに貝の名と『源氏物語』の帖名を書き込んであるんです。例えば細長いタケノコガイを笛に見立て、これを「横笛」の帖にあてるというように……。誰ですか、こじ付けじゃないかなんて言ってるのは?
ほかに「歌仙貝」もあって、これには歌仙が詠んだ歌まで書いてありました。このほかにも同じ趣向のものがあったように記憶していますが、丸福の方は明治時代に作られたものだろうとおっしゃっていました。
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