もう半世紀近くも前のことですが、『若冲/蕭白』<日本美術絵画全集>の図版解説を書いたことがあります。編集チーフの辻惟雄さんから回してもらったのですが、忘れることができない仕事の一つです。もちろん「貝甲図」も辻さんがリストアップされていましたから、若冲は貝殻のコレクションを持っていたのかもしれないなどと書いたんです。
しかしその後、この蒹葭堂旧蔵「貝類標本」を図版で見る機会があり、若冲はこのような標本に触れていたのかなと思いましたが、今回じっくりながめているうち、そうにちがいないと確信するようになったんです。もちろんあくまでこの種の標本ですが……。
もしそうなら、奇想幻想空想の画家若冲も、やはり江戸中期本草学や博物学、広く実証主義的精神の落し子ということになりますね。いや、鬼子かな(笑)
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