2023年12月16日土曜日

日比野秀男『渡辺崋山』1

 

日比野秀男『渡辺崋山――作画と思想――』(中央公論美術出版 2023年)

 30年ほど前、日比野秀男さんは『渡辺崋山――秘められた海防思想』(ぺりかん社 1994年)を著わして世を驚かせました。それまでは崋山が自己の艱難辛苦に満ちた一生を顧みて、その感慨を描いた傑作掛幅が「千山万水図」(田原市博物館蔵)であると考えられてきました。

また蟄居という窮屈な生活のなかで、身近な生物を見つめ、ありのままに描く時間がとれた平安なひと時を表象する優品画帖が、「蟲魚帖」(岡田美術館蔵)だと見なされてきました。もちろん僕もそれに従ってきました。

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