2023年12月17日日曜日

日比野秀男『渡辺崋山』2

 

ところが日比野さんは、そんな回顧や安寧とはマギャクともいうべき、崋山のビビッドな同時代的感覚を、この二つの作品に読み取ったのです。つまり日本の植民地化をねらう西欧列強に対して、わが国はそれをしっかりと認識し、防御につとめなければならないという崋山の危機感です。それを日比野さんは崋山の海防思想と呼んだのでした。

日比野さんはこの『渡辺崋山――秘められた海防思想』を著わすに先立ち、「千山万水図」に焦点をしぼって美術史学会の全国大会で口頭発表を行ないました。はじめてそれを聴いたときの驚きを忘れることができません。目から鱗が落ちるとは、こういうことを言うのでしょう。言われてみれば、まったくその通り、反論の余地はありませんでした。

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