2023年10月12日木曜日

サントリー美術館「虫めづる日本の人々」29

『日本博物学史』にあるように、生類憐みの令は貞享4年正月以降、数次にわたって拡大発令され、ついに虫にも及びました。貞享472日、「どこででも生類を売買してはいけない。キリギリス、松虫、玉虫の類、慰めにも(趣味でも)飼ってはいけない」という町触れが出たんです。この現代語訳は、先の仁科邦男さんによるところですが、もちろん南畝もこれを知っていたでしょう。

しかも同日、京橋5丁目の者がこれらの虫を売って牢屋に入れられているんです。戸田茂睡の『御当代記』では、逮捕の翌日に町触れが出たように書いてあります。同日でもひどいと思いますが、町触れが出る前の逮捕であったとすれば、言語道断以外の何ものでもないでしょう。

 

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