2023年10月3日火曜日

サントリー美術館「虫めづる日本の人々」20

 

ここで重要なのは、出版されたのが天明8年(1788)正月だったという点です。浅野さんの解説にもあるように、宿屋飯盛(石川雅望)や四方赤良(大田南畝)や尻焼猿人(酒井抱一)ら狂歌師30人が集まって、木下長嘯子の『虫歌合』にならい、虫を詠題に狂歌合を試みたのは814日のことでした。しかしそれが何年のことであったかは分からないんです。

南畝は天明77月ごろ狂歌から距離を置くようになり、俗文学から雅文学へ方向転換を始めます。しかし『画本虫撰』には、2番目に四方赤良(南畝)の「毛をふいてきずやもとめんさしつけてきみがあたりにはひかゝりなば」という1首が採られています。つまり、その虫狂歌合が行なわれたのは、天明6年以前の814日ということになります。


0 件のコメント:

コメントを投稿

出光美術館(門司)「琳派の系譜」7

愛用する『能・狂言事典』(平凡社 1987年)から、「高砂」の「鑑賞」を引用することにしましょう。 編者のお一人である羽田昶さんは、能謡曲にまったく無知であった僕を親切に教導してくださった恩人です。 「光琳と能」「宗達と能」といった拙論をまとめることができたのも、ひとえに羽田さん...