2023年10月2日月曜日

サントリー美術館「虫めづる日本の人々」19

 

飯盛の序にあるように、814日の夜、実際に狂歌師が集い(葛西太郎中田屋か)詠んだ狂歌を基に作画・制作したものと推定される。歌麿と蔦屋重三郎が刊行した彩色摺狂歌絵本7種の中で最も早い作品。歌麿の絵は狂歌を凌駕する出来で、彫師・藤一宗と摺師の技もすばらしく、同種の木版絵本としては世界的にみても最高峰に位置づけられる。

 かつて千葉市美術館で「ブラティスラヴァ世界絵本原画展」を企画した浅野秀剛さんが、世界の最高峰だと言っているんだから間違いありません。クオリティについてはこれに尽きるわけですが、饒舌館長にはいつもの独断と偏見があるんです()。結論を先に言えば、『画本虫撰』は松平定信による寛政の改革を揶揄した絵本、業界用語をつかえば「サトリ絵」だったんです。


0 件のコメント:

コメントを投稿

出光美術館(門司)「琳派の系譜」7

愛用する『能・狂言事典』(平凡社 1987年)から、「高砂」の「鑑賞」を引用することにしましょう。 編者のお一人である羽田昶さんは、能謡曲にまったく無知であった僕を親切に教導してくださった恩人です。 「光琳と能」「宗達と能」といった拙論をまとめることができたのも、ひとえに羽田さん...