荻生徂徠「夏日 宴に侍るに擬す」
避暑用 離宮 甘泉宮かんせんきゅう 濛々もうもうたる靄もや 覆ってる
ここは人境――とはいえど 晩夏 六月むつきの暑さなし
朝 紫の瑞兆が 天子の玉座に流れ来て
昼 真っ白な浮雲が 侍臣の衣を濡らすだろう
銅の仙人 手のひらに あふれる銘酒はハナダ色
舜しゅんの美徳がその刹那せつな かんばしい風 吹き起こす
その宴会におそらくは 天才詩人が招かれて
突然 雪がそのあたり 舞い散るさまを詠うたうだろう
*最後の一句は、漢代・梁王が文才ある者たちを集め、雪を詠ませたという『文選もんぜん』にある故事をふまえているそうです。ですから「『文選』にある梁王の 故事を再現するように」と補ってもよいでしょう。8句であるべき律詩形式を壊してしまうことになりますが……。
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