2021年1月15日金曜日

渡辺南岳筆「玄宗楊貴妃一笛双弄図」4

静嘉堂文庫が所蔵する『軽挙館()句藻』は、抱一の自筆稿本であり、抱一研究の第一次資料としてもよく知られています。その「放鶯処」と題される1冊を見ると、文化10年(1813)の条に次のように記されています。

む月四日南岳身まかりけるよし門人寛柔が書状とゞきけるに

  春雨にうちしめりけり京の昆布

 渡辺南岳はこの年14日、47歳で没し、東山の双林寺に葬られました。南岳の弟子である土方寛柔が、書状に京都の昆布を添えて師の逝去を知らせてきたので、抱一は上記の一句を手向けたのです。寛柔については何も分からず、作品を見たこともありません。しかし文化10年版『平安人物志』に載っていますので、当時は一応知られた画家だったのでしょう。

 

0 件のコメント:

コメントを投稿

渡辺浩『日本思想史と現在』8

  渡辺浩さんの『日本思想史と現在』というタイトルはチョッと取つきにくいかもしれませんが、読み始めればそんなことはありません。先にあげた「国号考」の目から鱗、「 John Mountpaddy 先生はどこに」のユーモア、丸山真男先生のギョッとするような言葉「学問は野暮なものです」...