2019年10月30日水曜日

石水博物館「川喜田半泥子の秋」8



この「金殿玉楼」の章には、半泥子がつけたユーモラスな銘の話が集められているのですが、その一つに「片身替茶碗 銘 寝物語」があります。僕もマイベストテンに選んだ傑作です。美濃塩川の土と千歳山の土で成形した二つの茶碗をそれぞれ真っ二つに切り分け、別々の二つをくっつけ一碗にして焼いた茶碗です。美濃塩川の黄色い土と千歳山の赤い土――白釉がかかって黒っぽくなっています――が、ちょうど慶長小袖の片身替りみたいな強い視覚的効果を生み出しています。

半泥子は『随筆 泥仏堂日録』のなかで、単味の土を灘の生一本にたとえて推奨し、合せ土は安物のカクテルだと難じています。「寝物語」は二種の土を用いているといいながら、あくまで単味の土であり、合せ土じゃ~ありません。これこそ、半泥子の素材主義をよく示しているではありませんか。

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