2019年10月19日土曜日

追悼 池内紀先生4


部屋をとり、シャワーをあびて、着替えをする。それから散歩に出る。ほんの少しだが偵察に出る兵士の心もちだ。ひと巡りしてもとの広場にもどってくる。とたんにその町と、なにやら縁ができたぐあいだ。あらためてまわりを見廻すと、噴水の水盤に顔が刻んである。頬をふくらませた幼な子と並び、智恵深い老人がいて、その口からも澄んだ水があふれ、白銀色の線を描いている。そんなふうにして町から町へ巡っていった。

 実をいうと、これを「僕の一点」に選ばせてもらったのは、愛するハイデルベルクが登場するからなんです。はじめてこの町を訪れたのは1982年でした。

0 件のコメント:

コメントを投稿

渡辺浩『日本思想史と現在』8

  渡辺浩さんの『日本思想史と現在』というタイトルはチョッと取つきにくいかもしれませんが、読み始めればそんなことはありません。先にあげた「国号考」の目から鱗、「 John Mountpaddy 先生はどこに」のユーモア、丸山真男先生のギョッとするような言葉「学問は野暮なものです」...