亀井小琴に贈る詩
亀井小琴 詩がうまく 絵筆も揮う軽やかに
天下に冠たる南画家で 驚かぬもの いやしない
詠歌[よ]めば式部や少納言 二人と甲乙つけがたく
『詩経』の鄭風・衛風を 兼ねるがごとき素晴らしさ
亀井小琴は淡窓が若いとき教えを受けた筑前福岡の儒者・亀井昭陽の娘さんで、のちに閨秀画家として名を挙げました。かつて畏友・安村敏信さんが、板橋区立美術館でとても刺激的な特別展「江戸の閨秀画家」を開きました。
先日「堀文子展」を紹介したとき書いたように、「閨秀」というのは、ちょっと問題を含んでいる言葉です。安村さんは「閨秀画家」というタイトルに批判がおこって、注目が集まるだろうと思い、あえて銘打ったそうですが、のれんに腕押し糠に釘――目論見はみごと外れてしまったと笑っていました。
その特別展で見た小琴の「蘭石図」(福岡市博物館蔵)は、実にさっそうとした水墨画でした。そこで山根有三先生が主宰される華道・真生流の機関誌『真生』に、「文人の花」シリーズの一つとしてこれを紹介したことも、いま懐かしく思い出されるのです。
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