2018年4月3日火曜日

広瀬淡窓9




亀井小琴に贈る詩
 亀井小琴 詩がうまく 絵筆も揮う軽やかに
 天下に冠たる南画家で 驚かぬもの いやしない
 詠歌[]めば式部や少納言 二人と甲乙つけがたく
 『詩経』の鄭風・衛風を 兼ねるがごとき素晴らしさ

亀井小琴は淡窓が若いとき教えを受けた筑前福岡の儒者・亀井昭陽の娘さんで、のちに閨秀画家として名を挙げました。かつて畏友・安村敏信さんが、板橋区立美術館でとても刺激的な特別展「江戸の閨秀画家」を開きました。

先日「堀文子展」を紹介したとき書いたように、「閨秀」というのは、ちょっと問題を含んでいる言葉です。安村さんは「閨秀画家」というタイトルに批判がおこって、注目が集まるだろうと思い、あえて銘打ったそうですが、のれんに腕押し糠に釘――目論見はみごと外れてしまったと笑っていました。

その特別展で見た小琴の「蘭石図」(福岡市博物館蔵)は、実にさっそうとした水墨画でした。そこで山根有三先生が主宰される華道・真生流の機関誌『真生』に、「文人の花」シリーズの一つとしてこれを紹介したことも、いま懐かしく思い出されるのです。

0 件のコメント:

コメントを投稿

追悼 高階秀爾先生16

   総合司会の大高保二郎さんがみごとに〆れば、 2024 鹿島美術財団東京美術講演会もほぼ定刻に終了、会場を地下ホールに移して、コロナ明け初のレセプションとは相なりました。僕たちは高階秀爾先生の一日も早き快復を祈念しつつ歓談、杯を重ねましたが、 9 日後に幽明界を異にされるとは...